月の絆~最初で最後の運命のあなた~
真面目くさったレンの言葉に、苛立ちの感情はどこかに吹き飛んだ。
〈お弁当〉
その言葉が、頭の中をぐるぐる回っている。
「まさか、遠足や節約のために持っていく……あの昼食の事を言ってんの?」
「うん。それ以外にあったっけ?」
「何で?」
いつもは輸血用のパックにいれるから、献血する。昨日、献血したばかりだから在庫は足りているはずだ。
すると、あたしの考えている事が分かったのか、説明をはじめた。
「撮影で女の子と絡むとなると、血液パックじゃダメなんだ。生き血じゃないと、僕の体温が上がらない……その意味分かる?」
「つまり、体温が上がらないって事は、あなたが吸血鬼だとバレる恐れがあるって事ね」
「そう、正解。いつもは同じ吸血鬼のモデルなんだけど、今回はグラビアアイドルらしいんだよ。僕らの仲間に、グラドルはいないからね」
グラビアアイドルといえば、水着を着て砂浜やプールで撮影するイメージをあたしは持っている。
グラビアアイドルがいないのは、太陽が毒だから?
喉まででかかった言葉を、あたしは飲み込んだ。
「分かった。どこに行けばいい?」
肩と頬で携帯電話を挟み、鞄の中にあるはずのスケジュール帳を探そうとして、レンの言葉に探す手を止めた。