月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「月城だ」
そう名乗ると、レンは無言になった。
もしかしたら、そのまま切られるかもしれないと考えたが、そこまで酷い奴じゃなかった。
「君がかけてくるなんて……あしたは、月でも降ってくるのかな?」
「言ってろ」
良くないことに、相手がレンだと本題を口に出来ない。
本能的に、電話を切りたい衝動に狼呀はかられたが、そこはぐっと我慢する。
「……頼みがある」
静かに冷静な声で言うと、癪に障るが相手はすぐに理解した。
「マリアの事かな? もうすぐ満月だからね」
「ああ。身内にマリアを気に入ってない奴がいる可能性がある。俺が戻るまで……守ってくれないな?」
「構わないよ。でも、君のことだから条件があるんじゃないか? 思うに……血を吸うなってところかな?」
電話の向こうから、くすくすと笑いが聞こえる。
レンが、自分以上に人狼を理解していて、狼呀は腹が立ってきた。
「そうだ。できるか?」
「もちろん。君の伴侶に手を出さないよ。それじゃあ、マリアに連絡してみる」
あっさりと電話は切れた。