月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「さてさて、これで安心かな?」
今も、瑞季の楽しそうな顔は変わらない。
こういう面を見ていると、瑞季のほうがアルファに向いてるんじゃないかと狼呀は思う。
ベータなんて立場は、自分が向いている。
「今からでも……お前がアルファになったほうが、いいんじゃないか?」
そう言うと、瑞季は驚いた顔をした。
まさか、そんな話になるなんて思っていなかったのだろう。
「馬鹿だ……やっぱり馬鹿だった」
「お前なあ。さっきから、人を馬鹿馬鹿言い過ぎだろ」
「仕方ないだろ。本当のことなんだから」
狼呀は体を前に倒し、膝に肘をついて両手で顔を覆った。
「俺は、どう考えても向いてない」
暫くの間、聞いてないのかってくらい、瑞季は一言も喋らなかった。