月の絆~最初で最後の運命のあなた~
少し冷めたコーヒーをすすりながら、店内に目を走らせていると、瑞季が口を開いた。
「二度と……あんな馬鹿げた事を言うなよ?」
彼の目も表情も真剣で、口にしようとした言葉は言えなくされた。
「オレは、確かに相手を掌の上で転がすのが好きだし、一族の全てを把握して情報も持ってる」
「そうだな。だから」
「でも、それはベータの仕事だからだ。オレにアルファの能力や資質はない。それは、生まれた時から決まってるんだよ」
はじめて言われた本音に、狼呀は言うべき言葉が見つからない。
ラウンジ全体まで静かになった。
重い沈黙を破ったのは、携帯電話の着信音だ。