月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「……もしもし」
瑞季と交わした会話で、まだ軽く動揺していた狼呀は、誰からの着信か見る余裕もなく椅子から立ち上がってから出た。
そして、人狼とは違う微かな唸り声に、緊張が走った。
「もしもし、月城か?」
「ああ、どうした?」
静かになる電話に、心臓の鼓動がやたらと大きくなった。
「……何度もマリアに電話をかけたけど、まったく繋がらない。三回目になったら、途中で切られて……それ以降は電源が切られているみたいなんだ」
まさかの内容に、足元がぐらついた。
しかし、茫然としている場合じゃない。
すぐに伴侶の安全を確かめねばならない。
あいさつも無しに電話を切って振り返ると、すでに瑞季がエレベーターを呼んでいた。
上の階に着くまでの時間が、今まで以上に長く感じる。
まるで永久の時間が過ぎたように思った頃、エレベーターは目的の階で扉を開いた。