月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「もう外にいるよ」
「は? なにを馬鹿なこと言ってんの?」
「そう思うなら、窓の外を見てごらん」
言われるがまま、あたしはカーテンを開けて、見事に固まった。
「おはよう、マリア。家の中に、君以外の気配や匂いはしないけど?」
外には車から降りて、呑気に手を振るレンの姿があった。
「なんで、ホントにいるの!」
携帯電話の通話終了ボタンを押して、あたしはオシャレの欠片もない黒いロングTシャツと、ゆったりとしたボーイフレンドジーンズに着替え、前日と同じトートバッグを掴んで下に下りた。
静かで冷たい家。
いつからか、闇に侵食されはじめた場所を振り返ることなく、あたしは家を出た。