月の絆~最初で最後の運命のあなた~
[五]
狼呀と協力して瑞季さんを降ろし、地下に下りていく。
狼呀に渡された鍵で扉を開くと、瑞季さんは逃げるように中へと入っていった。
その顔は、少しだけ人間のものではなくなっていた。でも、恐怖や嫌悪はない。
ただ、本来の姿があることが羨ましかった。
「部屋で、満月が終わるのを待っていてくれ」
あたしが瑞季さんを見送っていると、前に約束した言葉をもう一度狼呀は口にした。
責めてる様子はない。
きっと、あたしが出ていきたくて出た訳じゃないのを知っている。
ただ、傷ついているのが分かった。
彼は、自分を責めている。
その傷を癒してあげたい。忘れさせてあげたいと心から思う。
気づけば、あたしは扉の中に消えようとしていた狼呀の手を掴んでいた。
まずは話を聞いてもらわないといけない。
「あたし……あなたを愛してる」
「マリア?」
突然の告白に、狼呀はあきらかに戸惑っている。