月の絆~最初で最後の運命のあなた~
息をつく間もなく、酸素を求めるようにキスを続けていると、あたしを抱き上げたまま器用に部屋の鍵を開けて、入ってすぐの壁に押し付けてくる。
ようやく離れた唇に、お互い荒い息を吐いた。
「本当にいいのか? 今なら……まだ、やめられるぞ。鍵は開いてるから、逃げたければ」
彼は優しい。
ここまできても、まだあたしに逃げ道をくれる。
まだ付き合いは長くないけど、これまで色んな事をくれた。
でも、あたしは一度だって、狼呀の望む事をしてあげていない。
彼自身、お返しを求めた事はなかった。
だから、今がその時――。
「かまわない」
他の言葉は、言わせてもらえなかった。優しくもあり、激しい思いのこもったキスで口を塞がれたから。
夢中でしがみついて、彼の愛撫に心の奥まで撫でられているうちに、しくベットに下ろされた。
あたしを見つめる琥珀色の瞳は色合いを増し、情熱と欲望で燃えている。
あたしの腰をまたぐ形で膝をついて、Tシャツを脱ぐ姿は男らしくて、その下から現れた筋肉に、思わず女らしいため息がもれた。
「マリアのこの服……気に入らない」
狼呀は、あたしの着ているパーカーの裾を掴むと、体を倒して布地の匂いを嗅いだ。
「これ……冬呀の服なの」
だから、乱暴に扱わないでほしいと言いたかった言葉は、狼呀の口の中にのみこまれた。