月の絆~最初で最後の運命のあなた~



「そういえば、あたしがお弁当だって言ってたけど、咬まれたら吸血鬼になるの?」


「まさか! 咬んで吸血鬼になるなら、そこらじゅう吸血鬼だらけだよ。吸血鬼に変える時には、相手の血を致死量ぎりぎりまで吸って、自らの血を飲ませなくちゃいけないんだ」


「ふ~ん、そうなんだ」


「僕にとってマリアは、珍しい相手なんだ。吸血鬼になんてしない」


「なにそれ? 貴重な血液供給源を無くしたくないって言いたいの?」


「違うよ。僕の近くにいるのは、色仕掛けしてくる子や咬んで欲しいって子とか、快楽を求めて吸血鬼になりたいって子達だからね。マリアみたいに、まともな会話が出来る子ってナイトクラブに来ないんだ」


 何度か血液銀行と同じビルにある、レンが経営するナイトクラブ〈ヘヴンズドア〉に行った事があるが、たしかにレンの言う通りの人間しか来ない。


 どこで情報を得るのか、本物の吸血鬼が集まっていると物好きが集まる。


 熱狂的な吸血鬼信者たちは、ある程度口が固く、他人に漏らす事はない。


 その代わりにと、血を吸われることを望む。


 ある意味、常軌を逸している。


 目は落ち窪み、濁った瞳に光はなく、吸い寄せられるように毎晩やって来るのだ。










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