月の絆~最初で最後の運命のあなた~



「聞いてもいいか?」


「ん……何を?」


「あの冬呀って奴が言ってたこと。アルファ夫婦の子って?」


 あたしは、狼呀の胸に置いていた手を握りしめた。


「あたしは、オオカミシフターのアルファ夫婦の子供だったんだって。二人は……争いに巻き込まれて亡くなって、なぜかあたしは普通の人間の家で育てられた」


「オオカミシフター……」


 狼呀は呟くと、優しく髪を洗い流してくれた。


「冬呀は、小さい頃のあたしを知っていて、ずっと探してくれていたの。それから……」


 言うのを躊躇った。


 あたしの嬉しかった心は、狼呀を傷つけると思ったから。 


 彼は、あたしの心に安らぎと喜びをくれた。


 傷つけたくなんかない。

 
「それから?」


 なのに、あたしの葛藤に気づかず、狼呀は優しい手つきで首の後ろを揉みながら問いかけてくる。


 もう不安なんてないみたいに。


「狼呀。忘れないで、あたしはあなたを愛してる」


 もう話を先伸ばしにしている訳にはいかない。


「でもね……」


「やめてくれ。聞きたくない。俺を説得しようとしないでくれ」


 言わなくても狼呀には分かっているのか、拒絶の思いがありありと伝わってくる。


 でも、今話さなくちゃ、二度と話せない。












 
 

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