月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「さあ、着いたよ」
レンの一声に、考え事は中断された。
車は穏やかなエンジン音を立てながら地下の駐車場に入り、エスカレーター近くの駐車スペースに停まった。地下で人目がないからか、自分で開ける間もなくレンがドアを開けてくれる。
「あたしは、何処に居ればいいの?」
「たしか、2階に僕の控え室が用意されてるはずだから、そこで待っててくれるかな」
レンは、エレベーターに乗ると、2階で止まるようにボタンを押した。
「時間はどれくらいかかるの?」
「4時間くらいかな。ただ、1時間に1回だけ吸わせてもらうかも」
「それは構わないけど、退屈しそう」
「悪いね。終わったら、食事にでも連れて行くよ」
エレベーターが開き、レンに促されて先に降りた。
日本に住んでいて、ここまで紳士的な男はいない。
突然、レンがどこの国の出身で、いったい何歳なのか知りたくなった。