月の絆~最初で最後の運命のあなた~
[三]
首を揉みほぐしてやると、マリアは悩ましげな声を漏らした。
言葉の先を聞きたくなかった。
嫌な予感しかしない。
だから、狼呀は肌に触れた。
今は、感情を爆発させかねない話を聞いて、保護本能が持つ凶暴性を抑えられる自信がない。
彼女を思っての行動と言い訳しながら、首を揉まれて艶やかな声を出す彼女の様子に、狼呀は股間のものを固くした。
こうしたのは、性的なことをするためじゃない。
それなのに、安心したマリアは両手を狼呀の胸に手を当てて、さらには胸に口づけてきた。
髪を洗いはじめて、爪を立ててきた瞬間には、危なくタイルの壁に押しつけて中に押し入るところだった。
(昔、夢見た時には、こんなに官能的な行為だとは思わなかった)
狼呀は丁寧に髪を洗い流し、スポンジを手に取ってボディーソープを泡立てた。
首から肩、鎖骨から胸に泡立ったスポンジを滑らせて、背中を洗う時には自身の胸に抱き寄せる。
痛々しい爪痕だけは避け、脇腹と腰を洗って体を離そうとしたら――。
「狼呀……お願いだから聞いて。今を逃したら、あなたに何も伝えずに去らなくちゃいけないから」
「なら、去らなければいい。俺の横にいればいいじゃないか!」
シャワーで二人の体を洗い流し、手早くタオルで水気を拭き取った。その仕草は、言葉とは裏腹に優しい。