月の絆~最初で最後の運命のあなた~



 ぐずぐずしていると、どこからか遠吠えが聞こえてきた。
 

 なんだか聞き覚えがある。


 なにを言っているのかわからないけど、あたしを呼んでいることだけはわかった。


「きっと、ファングね」


 彼が起きないように、静かにベットから抜け出し、脱ぎ散らかした服を身に付けた。


 狼呀の心を少しは、満たしてあげることはできただろうか。


 名残惜しいけど、甘い時間は終わりにしなくちゃいけない。


 満月が終わったら、帰ると冬呀と約束もした。


 あたしがここで歓迎されることはないし、冬呀が狼呀を歓迎しないのも感じ取れた。


 二人で一緒の場所にはいられない。


 それに、狼呀は人狼族のアルファで必要とされているから、ここを離れる訳にはいかない。


 狼呀の為と思いながら、あたしは彼を傷つけてる。


 あたしは身勝手だ。


 別れるのもつらい。


 狼呀を伴侶だと思うし、愛している。


 だけど、あたしには冬呀の群れが必要だ。


 




 
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