月の絆~最初で最後の運命のあなた~



 足音を立てずに眠る狼呀に近づき、目元にかかる髪をどかしてやった。


「んっ……マリア」


 名前を呼ばれて、どきりとしたけど、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。ただの寝言。


 夢にまで、あたしが出ている?


 こんな幸せなことが、他にあるだろうか。


 目元が熱くなってきた。


 もう行かなくちゃ。これ以上いたら、本気で考え直してしまいそうだ。


 眠る狼呀の頬に、別れの口づけをした。


「ありがとう、狼呀」


 こんなあたしを愛してくれて。


「それから……ごめんなさい。さようなら」


 あなたを傷つける事しか出来ない。


 あたしは、永遠の伴侶に背を向けた。










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