月の絆~最初で最後の運命のあなた~




 もちろん、やり直せないこともある。


 受け入れなくちゃいけない事だってある。


 その一つが、狼呀との絆だ。


 一ヶ月に一回くる満月のたびに、離れていても狼呀の心と体の痛みを感じる。


 悲しみも。


 深い悲しみに、あたしは癒してあげたくて、そばに行きたくて眠れなくなる。


 それが出来ないから、心はナイフで何度も刺されたように痛み、血を流す。


 あたしが狼呀にしたことと比べたら、たいしたことのない罰だ。


 泣く資格すらない。


「どうかしたの? ファング」


 あたしの気持ちを察して、ファングが足に体を擦りつけてくる。


 あれ以来、彼とは仲良くなった。


 お互い、変身する能力を失っているからか、二人でいると補える気がして安心する。


 別に会話が出来る訳じゃないけど、絆のようなものを感じていた。


「マリア、手伝ってくれないか?」


 家を訪ねて来た冬呀の声に、あたしは心の中に安心感が広がっていくのを感じた。


 自然と笑顔が浮かび、喜んで彼の荷物を受け取りにいった。


 手にはワインのボトルとチキンの箱を持っていて、腕に下げているエコバッグも何だか重そうだ。


 冬呀に隠れてしまっているアニーは、ポテトサラダやフライドポテトを持って入ってきた。
思わず目を丸くした。


「なんだか、豪勢ね」


 誰かの誕生日だろうか?


 ぼんやりと、そんな事を考えていると、冬呀とアニーが信じられないものでも見る目付きで見てきた。








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