月の絆~最初で最後の運命のあなた~



 スローモーションのような時間が流れ、雪の白さに目が眩んだ。


 ほら、やっぱり夢だった。


 匂いまで勘違いするくらい、あたしの頭はどうかしているのかもしれない。


 この場所を知っている訳がない。


 そう諦めかけた時――。


「じんろうは帰れ―!」


 そんな子供たちの笑い声とともに、多くの雪玉が一方に飛んでいく。


 直後、聞きたかった声が聞こえてきた。


「こらこら、一斉に投げるなよ。いてっ!」


 雪玉が顔に当たり、派手に雪の中に倒れ込んだ人影に、走りよった子供たちは一斉に襲いかかった。


 それを目にしても、いまだに信じられない。いまだに自分に都合のいい幻を見ているんじゃないかと疑いたくなる。


 静かな自然の中には、大好きな彼と子供たちの笑い声が響き渡った。


「あっ! マリアお姉ちゃん!」


 雪の中で遊んでいた子供たちは、あたしに気づくとシッポが見えそうなくらい嬉しそうに駆け寄ってきた。


 全身雪だらけのままで、綺麗に払ってあげるけど、その手が小さく震えてしまう。




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