月の絆~最初で最後の運命のあなた~



 顔を上げた瞬間、この幸せな夢が終わってしまいそうで怖かった。


 そんな、あたしの気持ちなんてお構いなしで雪を踏みしめる音が近づいてくる。


「マリア、メリークリスマス。それから……誕生日おめでとう」


 記憶の中にあるのと変わらない優しくて甘い声が聞こえてきて、あたしの目からは大粒の涙が溢れた。


「お願い……ゆめなら……覚めないでっ」


 俯いて両手で顔を覆うと、力強い腕の中に引き寄せられた。相手の上着に着いている雪が手に触れたのが冷たくて、これが現実だと告げている。


「夢じゃないよ。マリア……顔を見せてくれ」


 懇願にも似た響きに、あたしはようやく顔を上げた。夢でも、幻でもない。本物の愛しい人がいた。


「狼呀っ……」


 名前を呼ぶと、啄むようなキスが降ってきた。


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