月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「最初の条件は、マリアに連絡を取るな、探すな、会いに来るなだった」
後ろからあたしの腰に両手を回しながら、ため息混じりに呟いた。外の冷たさに、吐く息は白い。
「この二ヶ月は……生きているような気がしなかった」
首筋に鼻を擦り寄せ、冷えた唇が何度も押し付けられてあたしは震えた。冷たいからって訳じゃない。体の奥は、蝋燭に火を灯されたみたいに温かくなってきてる。
「あたしだって、同じ気持ちだった」
「本当に?」
嬉しそうな言葉に彼に向き合うと、自然と唇を合わせた。ここが外だとかは関係ない。息をするのと同じくらい、あたしには彼が必要なのだ。二度と離れたくない。
そう思いながら口づけを深くしていると――。
「とうが~! いちゃいちゃしてるよ~!」
小さな子供らしい舌足らずな声に、あたしたちは唇を離して下を見た。丸くて澄んだいくつもの目に見られていたことに、急に恥ずかしくなった。
「月城、忘れるなよ。ここにいる間は、個室だろうが森の中だろが、二人きりになるのは禁止だ」
戸口に現れた冬呀は、心底楽しそうに言うと子供たちを引き連れて中へと戻っていった。
「まったく……忌々しい狼だな」
ぶつぶつと文句を言う狼呀に慰めのキスを贈ると、彼の唇が満足気にカーブを描いた。額をくっつけあい、無言の愛を交わし合う。
「聞こえてるぞ!! はやく中に入れ!」
家の奥から聞こえてくる冬呀の声に、あたしたちはくすくす笑いながら階段を上った。
掴めると思わなかった幸せを心に抱き締めながら、家族の待つ家の中へと行くために――。
~END~