月の絆~最初で最後の運命のあなた~
痛みに顔をしかめている間に、狼呀までそのまま乗り込んでくる。
後ずさろうにも、車の広さには限界があって体の大きな彼が入ってくると避ける場所はない。
「離れてよ!」
両方の肩に手を置いて押した。
なのに気にした様子もなく、あたしの首が見えるように髪に触れると後ろに払う。
「まさか、吸血鬼フリークなのか?」
「吸血鬼フリーク? なによそれ」
聞きなれない言葉に、あたしは眉をひそめた。
狼呀のような普通の人間の男が、吸血鬼の存在を知っているなんてありえない。
秘密を守るのも契約の一部だと考え、あたしは鼻で笑った。