月の絆~最初で最後の運命のあなた~



 狼呀の顔が目の前にあり、熱い視線があたしの心を溶かす。


 最初は遠慮がちに啄むようなキスだったのに、文句を言おうと口を開くと変わった。


「ちょっと……んっ」


 髪の中に手が滑り込んできて、逃げられないように頭の後ろを掴んでいるけど、痛みはない。


 それどころか、頭皮を揉みほぐすように動かされて安堵感を覚えた。


 訳が分からない。


 名前を知ったのは今日。


 抱いた感情は、特になかった。


 なのに、こうして触れられていると――。


 唇は深く重なり、狼呀の舌が歯列をなぞる。


 まるで、無反応なあたしを怒るみたいに、何度も何度も――。





< 58 / 356 >

この作品をシェア

pagetop