月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「彼女に何を怒られていたんだい、マリア?」
「少し眠っていて、声をかけられても気づかなかったから。ただそれだけ」
ふかふかのソファーに座って献血していたはずなのに、深く眠っていたらしく、いつの間にか時計の針は午後6時を回っていた。
すでに献血は終わり、腕から針は抜かれている。
針の代わりにガーゼが貼られている箇所を押さえながら、あたしは声のした方を見た。
「それで、あたしに何か用? 給料日と更新日以外では会う必要がないんでしょ? そういう話じゃなかったっけ?」
「まあ、そうなんだけど。あれから1ヶ月経ったから、どうしてるかなと思ってね」
「ちゃんと来てるんだから、わかってるでしょ? 見張ってなくても大丈夫。誰にも話してない……レンが吸血鬼だって」
彼――横溝レンは笑った。
誰も真似できない、魅力的な声を出して。