クリスマスケーキは売れ残るか!?
ワインなんて滅多に飲まないから、加減がわからず飲み過ぎたようで、
ふわふわした頭の中、なんでハルがここに連れてきてくれたんだろうとふいに思った。
「おーい。聞いてる?」
「え?あ、なに?」
「・・・奈々ってお酒弱かった?」
「ううん。ただワインって飲み慣れてないから、」
「ああ、そっか。結構アルコール度数高いからな。」
「・・・うん?そうなの?」
「まぁね。デザートにケーキがあるんだけど、」
「え!?ケーキ?」
ケーキと聞いて目を輝かせれば、
「好きだなぁ、ケーキ。」
と呆れたような顔をされた。
「だって、甘いモノ好きなんだもん。」
「昨日も食べたんじゃないの?」
「・・・食べたよ。」
「どれくらい?」
「半分。」
「ワンホールの?」
「だって・・・」
一人娘の三人家族で、お父さんもお母さんも四分の一食べてギブアップ。
次の日も仕事があって、夜には出かけていることがわかっていたから、今日中に食べないとイケナイと思ってしまったのだ。
「まぁ、奈々はもう少し肉付き良くしても良いからな。それくらいが丁度良いかな。」
「は?」
「あ、ほら来たぞ。」
目の前に出されたケーキには可愛らしいサンタが乗っていた。
「凄い!クリスマス仕様だ。」
「当たり前だろう。まだクリスマスは終わってないんだから、」
「そっか~。では、いただきます~」
ぱくっ。と一口食べれば、生クリームの甘さが口に広がる。
な、なんて美味しいケーキなんだ。
昨日ケーキを買って来てくれたお母さんには悪いけど、こっちのケーキの方が何倍も美味しい。
そう思って夢中で食べていると、
「・・・子供みたいだな。」
「え?」
言われた言葉が理解出来ずに顔を上げると、ハルの指が口の端に触れた。
くぃとなにかをぬぐい取って、その指をペロリと舐める。
「お、旨いなこのクリーム、」
「・・・ハ、ハル、」
「ん?なに、」
「あ、・・・うん、な、なんでもない、」
ケロッとした顔で聞き返されてしまっては何も言えない。
ハルの仕草にドキドキしてしまって、ケーキの味はみごとに吹っ飛んでしまった。