クリスマスケーキは売れ残るか!?
どきまぎしながらケーキを食べ終えて、食後のコーヒーを飲んでいると、おもむろにハルがごそごそと鞄の中から何かを取りだした。
ポンとテーブルの上に置かれたのは長細い箱。
綺麗にラッピングされているのでプレゼントだとわかるけど、
「はい。」
「・・・?」
ハルから手渡されて首を傾げた。
「クリスマスプレゼント。」
「あ、そうなんだ。・・・ごめん、私何も用意してない。」
「別に良いよ。俺が勝手に用意しただけだし、」
「でも・・・」
手の中にある箱を見つめる。
こうやってクリスマスプレゼントをもらうのは初めてだ。
まさかもらえるなんて思っていなくて何も用意してなかった。
どうしよう、と悩んでいる私に気付いたのか、ハルが強引にプレゼントを開けるように言って来る。
「ほら、早く開けて、」
「でも・・・」
「良いから、」
ハルからのプレゼント。
嬉しいけど、自分だけもらうのは悪い気がしてしょうがない。
上目遣いでハルを見やると彼は困ったように頬を指で掻いた。
「奈々、そんな顔、誰にも見せるなよ。」
「え?」
「はぁ~、良いから早く開けろって、」
ため息まで吐かれてしまって、私は慌ててラッピングをほどいた。
そして箱の中身を見て、
「・・・な、んで、」
ハルの顔と箱の中身を交互に見る。
嬉しそうにハルが言った。
「前に雑誌見ていた時にわかった。奈々の視線がそのネックレスにそそがれているの、・・・だからプレゼントしたかったんだ。」
「・・・あ、ありがと、」
「いえ、どういたしまして、」
「でも、なんか悪いよ。」
「なにが?」
「だって、私だけ・・・なにも用意してないし、」
こんな風にレストランに連れて来てくれて、プレゼントまで用意してくれていたのに、なにも用意してない自分が情けなく感じた。
気の利かない女だと笑われても仕方ない、
落ち込んで俯く私に、ハルが良い事を思い付いたとばかりにポンと手を叩いた。
「ん~、じゃあさ、これからの奈々の人生を俺にくれない?」
「は?」
「売れ残る前に、俺が買うよ。あ、違うか。俺がもらうから、奈々のすべて。」
「・・・ハル。何を言っているの?」
「今後の相談。」
「・・・えっと、ハル。彼女いたよね?」
「いないけど?」
「え?だって、」
「夏の終わりに別れたんだよ。気付いてなかった?」
「うん・・・クリスマスプレゼント悩んでたじゃない?だから、てっきり、」
「ああ、あれは奈々の欲しいモノをリサーチしてたの。何が良い?って聞いただろう。」
「・・・。」
「そうと決まれば、善は急げ、ってね。」
急にハルが立ち上がる。
二の句が継げない私の腕を取って、ニヤリと笑った。
「クリスマスには奇跡が起きるんだよ。」
END