女神の災難な休日
私が赤ん坊をあやしていると、前でハンドルを握ったバカ男はガシガシと片手で頭を引っかいていた。
「運が悪かったって諦めてくれ!俺が無事に逃げれるまで、ちょっとあんたらには付き合って貰わなきゃならない」
「は?」
私は漸く泣きやんだ雅坊の為に、マザーバッグから赤ちゃん用せんべいを出して口に突っ込んでいたところだった。だけど、今、何か聞こえたわよ。
「無事に、逃げる?―――――――何から?」
え、あんた一体何したの!?声がかなり低くなってしまった。こんなの、運が悪いじゃ片付けられないでしょ、全く!
またちらりとバックミラーで私を見てから、顔色の悪いバカ男はむすっとして言った。
「・・・コンビニ強盗」
「あ?」
「さっきのコンビニで、強盗してきたんだ。そしたら駐車場に人がいないのにエンジンかけっぱなしの車があったから、逃げるように乗ったってことだよ!」
え、真面目に言ってる、このオッサン?
私はマジマジと運転席の見知らぬ男を見詰めた。雅洋は子供用せんべいを喜んで食べていて、母親が仰天しているのには気付いてないようだった。
「・・・コンビニ強盗?」
「そう」
「それって、レジに金を出せ!といかいう、あのマヌケでチンケな強盗のこと?」
「・・・そうだよ」
「―――――――――」