女神の災難な休日
子供が生まれても相変わらず彼は私一筋で、相変わらず私はいつでも彼を失えるような心構えのままだった。それはそれで確かに素晴らしい毎日ではある。
少なくとも、悪魔みたいな男とデートを繰り返した過去の私よりは、満ち足りていて幸せなのだから。
彼は食卓の椅子に寛いで座り、にっこりと大きく笑った。
「年末年始の話だよ。俺はいつものように通しで入るから正月はなしだけど、君は休めるんなら、雅と沖縄に帰るのか?」
ああ。私はようやく彼の言わんとすることが判って、ぽん、と手を叩いた。
「沖縄ねえ、どうしようか・・・。うーん」
子供が生まれてから出戻ったデパ地下のチョコレート屋さんも年末年始は勿論忙しい。だけども、子供が小さいからとパートで入っているので、店長や他の古参のパートさん達が休みを優先でとってもいいよ~って言ってくださっているのだ。
私の現時点での実家は沖縄なので、息子と里帰りをするのか、と彼は聞いているらしい。
ちなみに彼は同じ百貨店のスポーツ用品売り場の責任者をしている。出入りの専門店の従業員である私とは違って百貨店の社員なので、年末年始は大繁忙期にて、勿論休みなどない。今年は息子がいるので、私は休みを貰っても彼はやはり仕事なのだった。
つまり、年末年始は母子で過ごすことになるってわけで――――――――――――
うーん、と私は考え込んだ。
「どっちでもいいんだけどね、あなたのお母さんと一緒に過ごすのでもいいし」