女神の災難な休日


 彼の母親は隣町に住んでいる。母子家庭で育った彼は成人してから母親とは疎遠になったらしく、結婚の挨拶をしにいくのが久しぶりの対面だったほどだ。それで、孫が生まれてからは付き合いも復活し、私もかなりよくしてもらっている。

 そりゃまあ、近いに越したことはないわけで・・・。沖縄っていっても両親が退職後に移住した家なので、私が育ったわけではないし。やっぱりあっちに戻るなら、2泊3日くらいにはなるし・・・。それだけ休みを貰えるかは、他のパートさん達と要相談だしな。

 シンクに腰掛けてつらつらと考えていると、そこで苦笑した彼が言った。

「前回沖縄にいった時は誘拐監禁騒動も起きたし、また何か起こるかもなら近場にいてくれたほうが俺は助かるんだけどねえ」

 ふん。鼻で笑ってやる。だって、確かにアチコチで事件に巻き込まれてはいるけど、それの半分は彼絡みだったのだから私の責任ではない。

 それに、と意地悪く微笑んで私は言ってやる。

「何が起きたって、ちゃんと自分で乗り切っているでしょ?それに関して文句言わせないわよ」

 腕を組む私を嫌そうにちらりと見て、彼は手で顔をこすった。

「・・・乗り切る。ものは言いようだな。巻き込まれた上に現場を混乱させる、というのもある意味では事実だぞ」

「とにかく、前回の沖縄の事件の時は、あなたの手は借りなかったわよ」

 タコの手は借りたけど、と心の中で付け加える。タコをひっつかんだのなんて人生で初めての出来事だったから、忘れようもないぜ。

 彼が目を細めた。



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