女神の災難な休日
「いや、地下に比べたら楽勝だぜー」
などと夫の彰人は笑うが、それでもその27日の午後の半休が、12月後半で彼が取れる唯一の休みだったのだから。
彼は3年ほど地下の食品で、魚屋の担当をしていた。その時は、クリスマスや歳暮の嵐は関係なかったけど、年末年始では死にそうに忙しかったらしい。だけど、今のスポーツ用品店では、クリスマスこそ忙しいのだ。早朝から出て夜も雅洋が寝てから帰ってくる生活で、同じく地下のチョコレート屋で歳暮とクリスマスの超繁忙期に殺されかかっていた私は毎晩何とかしてベッドに潜り込む、という状態だったのだ。
夢の中でまで包装したりしていた。
お釣りを間違えてお客様に謝罪するシーンまで見たりしていた。
それで、朝、げんなりしながら目が覚めて、ああ、夢でよかった、などと思うのだ。それくらいには疲れていたし、繁忙期に追い詰められていた。
だから勿論彼と抱き合うなんてなかったし、色んな意味で枯渇した女になっていたのだけれど―――――――――
「うーん、何か、感動だな」
そう言いながら、彼がごつごつした長い指を私の体に這わせている。
手を叩いて喜ぶ雅洋を囲んで小さなクリスマスパーティーを遅ればせながらした後で、彼は息子にプロレスをしかけ、クタクタに疲れさせてすぐに寝かしつけた。
その後で、当然のように私は襲われた、というわけで。