女神の災難な休日
つい、笑顔になってうふふと笑ってしまう。
ああ、やっぱり私、この男が好きなんだわ、そう思って。
「――――――でも、ねえ」
「うん?」
「お風呂に入りたい」
ヒョイ、と彼が私を覗き込んだ。本当に?そう、黒い瞳が言っている。今中止して大丈夫?そう言いたいのだろう。
自分でも既に瞳や体のアチコチが潤んでしまっているのに気がついていた。だけど、これは譲らないわよ、そう思ってぐっと睨みつける。
「・・・風呂?」
「そう、お風呂」
だって体中、デパ地下の埃だらけだし、汗もかいてたし、やっぱりそこに口付けされるのは嫌なのだ。彼に抱かれるときはいつだっていい匂いでいたいし、綺麗な肌でいたい。それにかなり久しぶりだからきっとアレは激しいだろうし、そうなると元々疲れきっている体ではすぐに寝てしまうに違いない。明日の朝起きて、枕に化粧の魚拓なんて嫌だ。
私の目に頑とした意思を感じ取ったらしい、彼は一度ため息をついたけど、思いなおしたようでにやりと笑った。
「いい案だ、風呂に入ろう」
「は?」
「一緒に入れば全部済む。うーん、確かにいい案だ!声も我慢しなくて済むぞー」