優しいキス
「え?彼女いなかった?だって…」
先月飲んだときは会社の子に告られたとか言ってたはず…。
思っていたことが顔に出たのか。
彼はため息混じりに言った。
「…つきあってねぇから」
「そうなの!?」
「お前が勝手に勘違いしてるだけ」
よく考えたら。
彼から“彼女ができた”と、はっきりした言葉を聞いたことはない。
飲み会に行った、とか名刺の裏にプライベートナンバーが書いてあったとか。
そんなんばっかり。
「…彼女、じゃなかったんだね…」
「なんだよ、その憐れむような目は」
「や、それは違うって!!」
憐れんでなんかない。
寧ろ。
どこかでホッとしてる自分がいた。