* 竜の眠る国 *




 こんなに近くにいるのに……


 どうして気づかないのっ…?!




『ユウナ……早く帰ってきて』



 カインは呟くと、一滴、涙を零した。





 カイン……


 私はここよ。


 ここにいるのに―――







 生まれてから、一度も離れた事のない私達。


 彼の想いが、私の胸を締め付ける―――…






 カイン、あなたに触れたい……





 手を伸ばした瞬間―――


 目の前の風景が、霧のように消えた。





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