* 竜の眠る国 *




 庭に一歩足を踏み入れると、柔らかな芝生に足を取られた。



「気をつけて。あちらの道を行きましょう」



 私がよろめいたのを見ていたマーサは、小さく笑うと、レンガで整えられた道を指さした。

 それに頷き、ゆっくり足を進める。


 久しぶりの外の風が気持ち良くて、大きく息を吸った。





「よく手入れされてるわ。それに、珍しい品種もあるのね」



 こちらの世界でも珍しい、青い薔薇と紫の薔薇も綺麗に咲き誇っていた。



「ユウナの世界にも薔薇はあったの?」

「ええ。ただ、この品種は難しくて……お祖母様は赤と黄色、オレンジ色の薔薇を育てていたわ」



 ……思い出した。


 家の庭に、綺麗に咲いていた薔薇を……

 お祖母様が丁寧に育てていた薔薇達。


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