* 竜の眠る国 *







「……何を泣いてる」






 低い声に、一瞬で今居る場所を思い出した。




「泣いてない日はないのか」



 呆れた声。この世界に来てからずっと聞いてるこの声。




「ズズッ 何でもないわ…」



 涙を拭い声の主に目を向ける。が、同時にその手を掴まれた。



「目が腫れる」


 ユリアンはそう言って、ハンカチを出し私の目にあててくれた。




「ありがと…」



 見上げると、ユリアンはいつものように無表情のまま私を見ていた。




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