* 竜の眠る国 *






 マーサは、その言葉に納得していないナタルを半ば無理矢理連れて、部屋を出ていった。


 途端に、静まりかえる部屋。





 シオンが、私を元の世界に帰すため巫女姫との結婚を決めた、なんて……素直に喜べない。







 私はこの国では異端者。


 本当は、こんなのんびり過ごせるような生活を許されるはずないのに……。

 今思えば、シオンが表に立って私を守ってくれてたのかもしれない。




 メイドに囲まれて、城の日当たりの良いこの部屋で、私は異世界に来てしまった自分の不運に嘆く間もないほどに、大切に扱われてたんだわ。


 ………そんなことに、気づきもしなかったなんて―――――




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