* 竜の眠る国 *








『ユウナ。少し休む…?』



 エルクが、涙の止まらない私を心配げに振り向き見た。


 私は乱暴に涙を拭い、


「……ありがとう。
 大丈夫よ。目にゴミが入っただけ」


 言って、私が笑顔を見せると、彼は無言でグンッとスピードを速めた。



 先ほどよりも速くなった足に、私はキツく彼にしがみつく。

 それに合わせるように、更に早める速度。









 ―――風を感じ思うのは、彼との日々。




 彼からの、優しい口づけ。


 おでこにキスを落とす前の、柔らかい微笑み……




 想い出すだけで、


 心臓が張り裂けてしまいそうになる。



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