* 竜の眠る国 *




『ボクらにとって、彼女は特別なんだ。

 理由は……言えない』



 言われた言葉に、ユリアンは眉間にしわを寄せた。


 エルクは風による木々のざわめきに耳を寄せ―――


『……さあユウナ、そろそろ彼らが姿を現す時間だ。

 早く神殿に向かった方がいい』



 私を見て、頭を振った。



「待ってくれ!

 神殿……?君は何をするつもりで…」


「ユリアン、私、行くわ」



 彼の慌てた様子を見て、私は力なく笑うしかなかった。

 それを見た彼は、更に険しい表情を見せる。



「……ダメだ。君は行かせられない。
 王子が来るまで待つんだ」




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