* 竜の眠る国 *





 シオン……彼がここに……?



 ―――…逢いたい。


 でも………



「……ダメよ。これ以上彼に迷惑はかけられない」


 言って、エルクの耳に顔を寄せた。







「………………お願い…」


『――分かった』



 私がエルクにお願いすると、彼は空に向かって心地良い歌を歌い始めた。



 すると、風はやみ、鳥たちの鳴き声も消え、辺りは静かになっていく…―――




「ユウナ…!

 ……っ や、めさ………ろ……」



 ユリアンも重くなる瞼を必死に開けながら、私を捕らえようと手を伸ばすけど―――


 震える手は空を掴み、そのまま草木生い茂る緑の絨毯に倒れた。



< 199 / 287 >

この作品をシェア

pagetop