* 竜の眠る国 *




「大丈夫か? 顔色が…」


 私の様子を見た兵士は、心配げに言葉をかけてくる。けど、途中で私が見ている方へ顔を向けると、彼も言葉を失った。




 押しても引いても動かなかった扉。


 それが、何故か開いていた。




 全部じゃない。

 ほんの、20センチほど。


 それだけだけど……その隙間から流れてくる風がとても冷たくて。

 その隙間から見える向こう側が、あまりにも真っ暗で。


 全身鳥肌が立ち、体が緊張状態から解放されない。




 ゴク、と、聞こえた気がした。

 でも、私は生唾を飲むほどの余裕はない。


 それなら、彼の……?



 やっと顔を動かし彼を見ると、険しい顔で扉を見つめていた。



< 218 / 287 >

この作品をシェア

pagetop