* 竜の眠る国 *
「大丈夫か? 顔色が…」
私の様子を見た兵士は、心配げに言葉をかけてくる。けど、途中で私が見ている方へ顔を向けると、彼も言葉を失った。
押しても引いても動かなかった扉。
それが、何故か開いていた。
全部じゃない。
ほんの、20センチほど。
それだけだけど……その隙間から流れてくる風がとても冷たくて。
その隙間から見える向こう側が、あまりにも真っ暗で。
全身鳥肌が立ち、体が緊張状態から解放されない。
ゴク、と、聞こえた気がした。
でも、私は生唾を飲むほどの余裕はない。
それなら、彼の……?
やっと顔を動かし彼を見ると、険しい顔で扉を見つめていた。
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