* 竜の眠る国 *
「……動くな」
低い、唸りにも似た声に、私はただ小さく頷くだけ。
頷いた拍子に、こめかみを一筋の汗が通り過ぎた。
足音をたてず、ゆっくり近付く。
その後ろ姿が、一歩一歩、遠ざかって………
静寂が、余計に緊張させた。
私が一ミリも動けない中、兵士は周りを警戒しながらも、慣れたように扉に近付いていく。
息苦しさを感じながら、それを見ていた。
そして、彼は開いた扉から少し体をずらし、中の様子に耳を傾け―――…
私は、駆け出した。
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