* 竜の眠る国 *




 聖竜はジッとシオンを見た後、フッと笑った。



“承知した。

 古よりの契約により、そなたの望みを叶えよう”



 言って、白銀の鱗で覆われた竜がゆっくり顔を近付ける。



“……息が浅い。

 もしやあの姫は、毒を使ったのではないか……?”


 言われて、その可能性が頭にあったのか、シオンは顔色変えず竜を見た。



“私がここにいなかったら彼女は城まで保たなかったぞ……”


 竜の青い瞳が細くなる。


 一瞬で変わった竜の空気に、シオン以外凍り付いたように動けなくなる。……が、シオンだけは変わらず竜を見つめたまま―――


「アナタがここに居ると分かっていたので」



 その凛とした声に、そばにいたエルクがシオンを見た。


 シオンは変わらず竜を見つめている。




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