* 竜の眠る国 *




“………ユウナをここに”


 さらに竜に近付くシオン。

 竜はユウナの顔をのぞき込むように顔を下げた。



“金と紫の娘……

 そなたは目覚めねばならない……”



 小さく呪文のように呟くと、瞳をゆっくり閉じた。




“…………”



 閉じた瞳から一筋の涙が流れ、ソレがユウナの血にまみれた腹部に落ちる。……と、キラキラと光る煙が小さく上がった。




“傷は塞がった。が、それだけでは毒には効かない。

 ……この鱗を煎じるがいい”



 キラキラ光り落ちゆくのを、皆が目にしていた。


 それは、私の胸に羽根のように落ちた。





「感謝します」


“……早く連れ帰れ。

 傷が塞がったとはいえ、まだ危うい”



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