* 竜の眠る国 *
ユウナの胸に光る鱗を手にし、シオンは力強く握り締めた。
「よし…!
城まで一気に駆ける。
―――ゆくぞ」
竜に頭を下げるとすぐさま私を抱き抱え、そのまま外へと急ぐ。
広間にいた兵士達は、シオンに遅れないように慌てて支度をし、聖竜と伝説のユニコーンであるエルクを横目で見ながら王子の後に続いた。
最後の一兵が頭を下げこの場から居なくなると、エルクは横たわる竜を見た。
その表情は何か言いたげで、竜は気付いていながらも目を合わせることはなかった。
すると、エルクは意を決したように何かを言いかけて、またすぐ下を向き、今度こそ、表情を変えて竜を見て口を開いた。
『……何故、ユウナを助けなかったのですか?』
“森の番人”として、人々から恐れられているエルクの足が、震えていた。
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