* 竜の眠る国 *




 さっきの蝶を思い出した私に、鹿が近づき、手をペロペロ舐めた。


 それに気づき、優しく鹿の頭を撫でてやると、警戒しているのか遠巻きに見ていたウサギとリスが、ゆっくり近付いてきた。




「出口にまだ大きな蝶がいるかもしれない。

 ……捕まりたくないの。
 どこか良い隠れ場所はないかな?」



 手振り身振りの私の言葉に、動物達は理解したのか、まず、肩にいた鳥が小さな鳴き声をあげ飛び立った。

 それと同時に、ウサギも私をチラチラ見ながら飛び跳ね進む。


 ……ついて来いって事?




 ヒールを手に持ち彼らの後をついて行く。


 足を少し休ませたせいか、さっきまでの痛みはなかった。



 しばらく歩くと、大きな湖が目の前に現れた―――



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