* 竜の眠る国 *








「気持ちいい―――」




 ユラユラ揺れながら奥まで歩いていくと、急に深くなる場所があった。


 腰くらいまでの浅瀬は、緑と青のグラデーションになっていて。

 深い場所は、濃い青で底が見えなかった。



 そこで、ぐるりと辺りを見回す。



 ――と、湖の水面が揺れ始めた。



「え…っ」

 気付いて、湖の底に目を凝らす。




 ……何か、いる!




 底の砂を舞い上がらせる“何か”は、大きな影で、水の中を自由に泳いでいた。



“何か”がいるのは分かるのに。


 舞い上がる砂のせいで、その姿は見えない。


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