* 竜の眠る国 *




「なっ 何でそんな…っ

 放して! 私を家に帰して!!」



 何故そんな大事(おおごと)になるの!?



 必死に引きはがそうと頑張るけど、掴む手は益々力が入る。



 信じられない…!



「ここはイギリスの何処なの?

 お願いだから、家に帰して!

 あんな化け物がいる湖なんて、誰が喜んで入るのよ!
 化け物がいるなんて知ってたら入ったりしな」

「―――しっ」



 叫ぶ私の口を、彼の大きな手が伸びてきて塞いだ。

 塞がれた口からは、言葉にならない声が出てくる。



 何故か彼に密着した状態になり、私の頭は真っ白。





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