* 竜の眠る国 *
「放して…!
―――あなたは王子のもとへ行ってちょうだい。
私は聖獣と……ガルーダとここにいます」
「何を言っている。
ここに置いていけるわけないだろう。
一緒に来るんだ」
兵士は静かに怒り、私を自分の後ろへと匿った。
“そなたの名は…?”
覗き込む様に頭を下げ、私達のそばに頭を寄せたガルーダ。
その問いに、兵士はゆっくりと振り返り、膝をついた。
「私は世継ぎの皇子シオン様の側近、ユリアン・チェスターでございます」
“ユリアンか。
よかろう―――
娘を世継ぎの皇子の元へ連れて行くが良い。
ただし……この娘に危害を加えることは、妾が許さん
皆に伝えよ”
ガルーダはそう言うと、私を見下ろし笑った……ように見えた。
そして、私の呼び声に二度と振り返らず、その姿を消した―――。
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