* 竜の眠る国 *









「……怪我をしているな。

 裸足で走るからだ」



 足の裏をいつの間にか切っていた私に気づき、背中におぶらせてくれたユリアン。


 口調は厳しくとも、何故か暖かさを感じることの出来る人。




「……ありがとう…」



 小さくお礼の言葉を言った瞬間、涙が頬を濡らした。






 ……帰りたい。


 パパとママ、カインのいる世界へ……




「カイン……逢いたいよぉ…」




 この場所に来てから、ずっと聞こえるカインの声。



 双子だから分かる。



 彼は、私を捜してる……


 ずっと呼び続けてる。私の名を………




< 89 / 287 >

この作品をシェア

pagetop