ヒトメボレ
ハジマリ。
入学してから3ヶ月たった、7月のある日。
私――――佐藤優菜(さとうゆうな)は、
友達の高崎千帆(たかさきちほ)と一緒に、
図書室の近くを歩いていた。
ドアの前を通った瞬間、そのドアが開いて、
男の子が出て来た。
その事には気付いていたんだけど、運動神経がとてつもなく悪い私は、男の子を避ける事が
出来ず、ぶつかりそうになった。
――――ドンッ
…いや、ぶつかってしまった。
そして、私は無様にコケた。
「ちょっと優菜、何やってんの!!」
千帆が笑いながら言う。
「いったぁ~…」
私はヒザをさすりながら立ち上がる。
「大丈夫?」
「…え?」
男の子から声をかけられた。
ぶつかった相手からそんな風に言われるのは、
初めてだった。
今までぶつかった相手からは、
「トロイな。ちゃんと前見て歩けよ」
とか、ヒドイ言葉しか言われなかった。
なのに、この男の子は…。
『大丈夫?』と心配してくれた。
「ねえ、大丈夫?」
私が返事をし無かった為、また言われる。
「あ、だ、大丈夫…。ごめん、ぶつかっちゃって」
「いや、良いよ」
私は男の子の顔を見て、謝った。
――――!!
顔が真っ赤になっていくのが、自分で分かる。
私は、この男の子に…
一目惚れしてしまった。