赤鼻のトナカイ
 鳥羽ちゃんは、わたしの視線を追って、彼のほうをうかがった。

「――おお、なかなかカッコいいではないですか」

 わたしのほうへ振り返り、ニッと笑みを浮かべた鳥羽ちゃんに、わたしは慌てて顔の前で手を振った。

「ないない。そんなんじゃないって」
「え~。そんなんじゃないって、なにがですか?」
「たぶん中学のときの同級生だと思うんだけれど、名前さえ思いだせないもの」

 意味ありげな視線を送ってくる鳥羽ちゃんに、わたしは全力で否定した。

「なぁんだ。残念です。千絵美さんの初恋の相手の登場かと期待しちゃいました」

 そう続けて、自分の仕事へと戻っていった鳥羽ちゃんの背中を確認したあと、わたしはもう一度、牛乳売り場の前で考えこんでいる彼の顔を、こっそりとのぞき見た。

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