赤鼻のトナカイ
 鳥羽ちゃんの言葉は、まるっきり的外れというわけでもなかった。

 彼女と話しているあいだに、わたしは、中学時代に初恋ではなかったけれど、ちょっといいかもと思ったことがある彼――水島《みずしま》くんだと気づいたからだ。

 中学時代の彼は、運動神経抜群で成績も良い、人気の高い男子だった。
 たしかサッカー部で、グラウンドを走る彼の姿を見て騒ぐ女子もいたくらいだ。
 そのときのわたしは同じクラスでも、日直が同じなどというような理由がなければ、声をかけることもできない女子だったっけ。

 もっとも、いまだに彼氏はできていないんだけれどね、と、思わず自分で、ふふっと笑ったとき。
 黄色いかごが、わたしの視界に入った。

「! ――いらっしゃいませ」

 慌てて口もとへ笑みを浮かべ、わたしはレジの仕事をはじめるべく、彼が持ってきたかごから商品を手にする。
 けれど。
 中学時代の彼のことを思いだしたせいか、視線をあげて彼の顔を見るなんてことが、わたしは恥ずかしくてできなかった。

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