赤鼻のトナカイ
「千絵美ちゃん、ケーキの売れ具合はどうかな?」

 人手が足りなくてレジを担当していた店長が、夕方から夜にかけてのピークを過ぎたころに、店内から声をかけてきた。

「けっこう売れてますけれど。売り切れるかどうかは微妙な数ですね」

 正直な気持ちで返事をする。
 続けてわたしは、半ば期待しながら店長へ訊いた。

「店長、余ったらケーキは、半額にでもして売りきっちゃいますか?」
「いや、半額にはしないよ。クリスマスケーキは返品がきくから、全部返しちゃうから」

 店長の返事に、わたしは驚きつつ、非常にがっかりした。

 クリスマスケーキが返品できることに驚いたけれど、半額にして売りきることはしないんだ。
 半額になるなら、わたしはひとつ、自分の家用に買って帰ろうと思ったのに。
 生ものなんだから、従業員にくらい安く分けてもいいと思うのになぁ。
 ――やっぱり店長、ケチだ……。

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